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人間そっくり

安部公房 著

裏と表が解らなくなるあべこべの世界

《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人――彼はいったい何者か? 異色のSF長編小説。

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◇感想と解説

自分の信じている世界なんて信用ができない。何が本当で何がウソなのか。
いったい何を根拠に区別してるんだ。

常識?思い込み?現実?幻想?

ときどきネット上で、近所の人に嫌がらせをされて困っています、という相談を見かける。相談をする人の中には、自分は何もしていないのに近所の人がおかしなことを言いだして嫌がらせを受けていると悩んでるケースも多い。
ただ恐ろしいことに、文を読むだけでは近所の人が狂っているのか、相談者本人が狂っているのか、全く区別がつかないことがあるのである。近所の人と相談者のどちらを正常と見なすかによって全く世界が異なってしまうのだ。

たとえば、相談者が正常とするならば、近所の人がありもしないことで相談者に嫌がらせをしていることになる。それならば、おかしいのは近所の人となる。
反対に相談者が正常でないとするならば、嫌がらせを受けているというのは相談者の被害妄想となってしまう。そうなってくると、相談者の方こそが、ありもしない言いがかりで近所の人に迷惑をかけてしまっているかもしれない。

まったくのあべこべ世界だ。

そういうものを見かけると、私はこの本を思い出す。どっちが本当なのかわからない感覚。
誰が狂っていて誰が正常なのか、もはや誰にもわからない。誰もが自分が正常だと思っているわけだけど、もし違ったら???

ああ怖い。

◇情報

1967.日本

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