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カンガルー・ノート

安部公房 著

最後の長編はベッドの上
あっけらかんとした生と死

ある朝突然、〈かいわれ大根〉が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに括り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した…。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ―果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは。急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編。

◇感想と解説

安部公房の最後の長編。

どこか吹っ切れたような、今生への未練がなくなったような。『カンガルー・ノート』 で安部公房のシュールな世界は悟りの境地へ達してしまった。常人には簡単には到達できない世界。死を覚悟した小説家の世界。

物語全般に渡って死のイメージがつきまとうが、それが恐ろしいほどにあっけらかんとしている。死への恐怖はほとんどなくて、むしろ滑稽な世界として描かれる。
この世で一番重たい題材を使ってこの内容。すごすぎる。
そもそもしょっぱなでスネからカイワレが生えてくるというエピソードが展開され、こんな始まりの物語が遺作だなんて、私はもう尊敬…畏敬の念すら感じる。

ベッドにくくりつけられた主人公のはちゃめちゃな冒険。

この物語の中で特に一番好きなのは ≪地獄≫ のくだりである。
主人公は想像を絶する方法で地獄へと行くはめになるのだが、たどり着いたその地獄がまた想像を絶するところで。

もう何なのよwww

笑い泣きである。
地獄がそんなとこなら、私は行きたい。
安部公房の地獄はそういう場所だ。

この本を完全消化するのは私はまだ若すぎる。年取るまでずっと何度も読まないといけない本だなと思う。
でないと解らないことがありすぎるよ。

◇情報

1991.日本

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