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トム・ゴードンに恋した少女

スティーヴン・キング 著

迷子のトリシアがどうやって生き延びたか

深い深い森の始まりの地で、9歳の少女トリシアの試合は開始された。家族で来たピクニックが、いつしか迷い込んだ巨大な森でのサバイバルゲームと化していたのだ。離婚した両親。母と喧嘩ばかりの兄。うんざりなはずの彼らがいまは無性に恋しい。迫り来る虫に蛇、絶壁に急流、食料不足。しかも彼女の背後には、人智を越えたなにかが迫る…。少女の絶望的な状況を圧倒的な筆力で描く感動作。

◇感想と解説

この小説。なんだか二十歳くらいのキングが書いた冷血非道な小説 『死のロングウォーク』 みたいな内容である。極限状態を作り出すための設定へ主人公がぽんと持ってこられて四苦八苦させられる。ここで大きく異なっているのは、若かりしころの小説とは違って、物語にちゃんと血が通っているところだろうか。

キングの無慈悲な実験台に選ばれてしまったトリシアは、9歳にしてはしっかりした少女である。ただし、キング小説によく出てくる神がかった子供たちとはちょっと違って、ごく普通の少女がやることくらいしかできない。超能力もなければ鋭い勘も持っていない。ただ野球が大好きなだけ…。

真っ暗な森の中でひとり生き延びるためにパニックと狂気の狭間をさまよう少女の心理がリアルに描かれている。

◇情報

1999.USA/The Girl Who Loved Tom Gordon

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